98年の春に台湾の南端にある墾丁に泳ぎにいきました。ジェットスキーもあるリゾート地ですが、近くには国家公園やバシー海峡をのぞむ鵞鑾鼻灯台・原子力発電所などがあり高雄の人に案内してもらいました。最初に98年とことわったのがミソで、これが90年ならできごとはおこらなかったハズです。彼は普通語・台湾語・英語・日本語をあやつれ、ガイドを職業にしています。それは、鵞鑾鼻灯台にまわった時のことです。灯台のまわりの公園に建国の父蒋介石の銅像がありました。このような銅像は国内のあちこちにあり、この銅像も他とおなじようなもので興味もなかったのですが、彼が日本語でかなりよくきこえる大きな声で「この黒い顔のひとが蒋介石です。」と言わなくてもわかることを説明してくれました。私がオドロイタのは、「黒い顔」という表現です。たしかに銅像はふるくて黒くサビています。わたしは「手も黒くなっているね。」と言うとニヤッとして、返事はしませんでした。ご存じないかたもいるでしょうから説明すると、台湾ヤクザのことを「黒手」と呼んでいます。元国家主席のことを、誰が聞いているかわからない場所で、ヤクザよばわりするのは、正直オドロキでした。もうここまで自由にモノが言える社会になっているのかと。かつてなら本当に世の中から消されても不思議ではなかったハズです。
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