完璧には通じなかった
12.ミヤゲのハンコ
町のいろいろなところにハンコ屋さんがあります。今はゾーゲ象牙は国際的に取り引きが禁止されているので水牛や石などのハンコがウインドーに並んでいるのをよく見かけます。ミヤゲにてごろな値段でしかもちいさいので、持って帰るのに便利です。ハンコにまつわる失敗談をひとつ。ホテルから歩いて5分の近くにあるごく小さなハンコ屋にはいってみました。店番をしていたのはオバサン1人で、英語も日本語もまったくわかりません。こちらも当時は普通語がまったくわからず、おたがいにどうしたものかと困っていました。でもハンコがほしいという意思はつたわったようで、「我欲印鑑1個」と紙にかけば大きくうなずいてくれました。オバサンはショーケースの中のハンコ見本を指差すので、白い水牛の角でできたダ円形のをゆびさしてこたえました。次は、文字と字体で、これも文字を紙に名前を書いてダ円でかこみますと、オバサンは字体の見本帳をみせて選べといっているようです。ここまではアッサリと了解できたようです。値段の交渉も簡単で、紙に「価格?」と書くと「300NT」と返して、それをXで消して「250NT」と加えると「オッケー」と返事しそこで終わりにしました。最後に「何時受領?」と適当に思いうかんだ漢字で、いつもらえるのか聞くと、「明天15:00」と答えるではありませんか。私は明日の9:00にはホテルを出発して帰国するので、これでは受け取れません。会社の駐在事務所にとどけさせることも考えたのですが、「我帰国明日9:00」と訴えると、「OK 8:00」と何とかガンバッてくれるようです。ここで、店の奥からかわいらしい中学生くらいの娘がでてきました。オバサンはどうもこの娘が英語がすこしできるので代わりに話をしろといっているようです。カタコトですがオバサンよりは話がつたわりそうで、間にたたせました。彼女のいうに、代金の半分を先に払う、出来上がりは明日8:00に渡す、ホテルの電話番号を教えてほしい、らしいので簡単にかたづけて、「アリガトウ」と言って返りました。さて翌日、日本に帰るその朝に約束の8:00になってオバサンは現れません。ホテルの前でながめても見当たらず、一度はあきらめて帰国しようかとも思いましたが、ダメもとでホテルの小姐にハンコ屋へ電話をしてもらうことにしました。その結果わかったのは、時間は確かにその通りだが、渡す場所はホテルではなく店のつもりだったそうです。オバサンは店で待っているそうであわてて取りにいきました。95%は通じていたのですがほんのちょっとした点が通じていなかったのです。ではホテルの電話番号を教えたのは一体何の役に立ったのでしょうか?
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