ジャカルタ　22.日々の仕事小ネタ集

22.日々の仕事小ネタ集

事務所が狭い

営業所とは別にプロジェクトの拠点として事務室を開きました。単なる連絡事務所で我々エンジニアがいるだけなのです。秘書２名、運転手１名、日本人１～４名のこじんまりしたものです。秘書は一人は有能ですがもう一人はダメなお嬢様。いったい誰が雇ったんだ？なぜこんなヤツを首にしない？どちらも中国系のインドネシア人３世で英語・インドネシア語はしゃべりますが日本語・北京語はダメ。
事務室は図のような配置で普通の事務だけならけっこう広いのですが、何しろ図面や書類の量がハンパではなく所長室・会議室を物置にしてました。僕がきて、あまりのヒドサ（整理整頓されておらず床の上にまで書類を置いてある）に上司に文句をいい、書類倉庫にするよう棚をたくさん入れてもらいました。結果は多量の書類がよけいに目立っただけでしたが。書類の束を並べかえて、要不要・処分期限をはっきりして僕が帰国するときにはカラッポにできるのを目標にしました。山のように書類をつくって、またゼロにするなんてムダな作業のような気がします。別のやりかたがあったんじゃないだろうかと。

コピー
インドネシア語ではコピと言うとコーヒーのことです。複写といいたかったらフォトコピーと言わなければなりません。英語とインドネシア語をチャンポンにして会話してると時々誤解してしまいます。事務室では英語で統一することに。
我々の仕事は、現地設計事務所から届いた図面１０部にサインして送り状をつけて発送する、ただそれだけなのですが．．．内容に不備がよくありチェックしてからでないと恐ろしくて発送できません。ミスを見つけるとそれを指摘して訂正版をまた届けてもらいます。そんなこんなでコピー屋さんにとってはいい客です。
急ぎの仕事で明日も出勤しなければならなくなった土曜日、ありゃ、コピー屋は休みのはず。それでもコピーしないとダメだから、そのコピー屋に電話して
「明日の日曜なんだけどコピーをたくさんしないといけないんだ。やってもらえるかなあ？」
「店は休みだけどＯＫです。一人でやるので少し時間がかかるよ。それと奥さんと用事があるのでコピーは午後からできる。午前中はダメ。」
オ～、ラッキー！
「わかった、じゃあ１時に電話するから取りにきてよ」
「じゃあ明日」
誰だ？インドネシア人は時間にルーズで仕事なんかチャランポランだと言うのは。こんなの日本人でもなかなかいないぞ。

別の日、上のコピー屋が休みなので近所のコピー屋をさがして行きました。夕方でもう仕舞いかけてたのですが頼むと、
「電源おとしたからちょっと待ってね。」
でっかいコピー機械で用紙もロール式です。ニーチャンがコピー機に原稿を入れるとニュ～～と次々とでてきますが全部つながっています。
「切り離すからここを押さえててよ」
「ＯＫ～～こうか？」
「ありがとう」
値段を聞くといつもの店よりずっと高い。手伝わされた上に高いなんて！クッソー。

文房具
図面の訂正をするために白い修正液を多量に使っていたのが、ある日もうなくなってしまいました。できの悪いほうの秘書しか事務所におらず、こんなヤツに頼むのは腹がタツので自分で買いに行きました。隣のビルの２階にあるスーパーマーケットか向かいの国営百貨店のどちらも近いので、より近い方のスーパーに。なぜか文房具はガラスケースに入っていて向こう側の店員にあれもこれも見せてくれと頼まないといけません。さてはデパート式の売り方だね？伝票を店員からもらうと別のカウンターで支払い伝票に支払済みスタンプをもらって、それを元の店員に渡すと品物がもらえる。店員が支払いカウンターの横で待ち構えていることもあります。向かいのデパートの文房具売り場では逆にスーパー式で出口にレジがあるだけです。なんかヘン。

ビルの前で商売
うちのビルは一番有名な場所でいつも人ごみなので物売りもいろいろいます。さすがにビルの中にはいませんが。
本屋　　　　　　といっても２０～３０冊を階段に広げているだけ。
辞書屋　　　　　なぜか辞書をふりかざして買わないか？だと
時計屋　　　　　腕にたくさんハメて「ローレックス！」
民芸屋　　　　　カラフルな木彫りを手にもって、背中にもクジャクみたいに差して
カスタネット屋　なぜカスタネットが売れると思うのか？
ランブータン屋　真っ赤なランブータンを束で。スーパーより新鮮
マンゴー屋　　　ちっちゃくて赤みかかった緑のヤツ
焼き鳥屋　　　　いろんなのがあっていいはずなのにブツ切焼き鳥だけ
笛屋　　　　　　小学校で使ったアレを
ジュース屋　　　座り込んだ前に木の小さな器が。これでスリツブすんです。
このうち実際に買ったことのあるのはランブータン屋だけでした。

道路を渡る
これがムズカシイ。信号がなければ基本的に自動車優先で絶対に止まってくれません。信号も横断歩道もない場所で渡るときにどうするか？
①他の人が渡る後ろについていく
簡単そうにみえて案外むずかしい。車のスキマをヒョイヒョイ通るけれど、僕にはアブナくて．．．
②すこし車がとぎれそうなら歩きながら腕を伸ばして手の平を相手に向け、待てという風にみせ、速度を変えずに渡る。途中でスピードを変えてはかえって危険。こういうのをスマートにオバサンがやっていてカッコイイ。
③横断陸橋をわたる。これは一番危険です。１人では決して使わないように。強盗・スリに出会います。陸橋の下もまわりから見通せないと危険です。

窓から
スハルト大統領の退陣前の騒然とした雰囲気でも仕事はしていたのです。他の日系会社も以前と同様に開いているのですから。ある日、何気なく窓から外を見ると火事の煙が見えました。めずらしく高層ビルの上のほうから煙が出ているんです。秘書嬢に教えると、「あれはインドネシア銀行よ」、国立銀行から火の手！当然その夜のニュースでも大々的にやってました。もうこれはイケナイ、帰国の決断をしたのはこのときです。若い同僚は早く帰国させ、私はとっとと仕事を整理することに。
別の日、設計事務所に向かっていてふと気がつくと窓に流れる景色がいつもと違います。それほど道路が混み合ってはいないのになぜ別のルートにするんだ、と運転手に聞くと「今日はいつもの道はデモがあるから」。いったいどこから聞いてくるのか、こういうウワサ話はあっというまに広がるようです。昼寝好きのコイツにどうしてそんな気の利いたことができるのか。恐るべし、噂好きのジャワ人！

お祈り
インドネシアはイスラムの人が大多数（もちろんキリスト教徒・ヒンズー教徒・仏教徒もいます）で毎日５度の祈りをします。アジアらしく熱心でない人も数多くいそうです。事務所ビルではお祈り室はみかけませんが、工場ではよくあります。私達の建設工事をしている客の工場にもモスクがありましたし、仮設の現場事務所にもお祈り部屋をつくりローカルスタッフが使うようにしてあります。低所得層ほど熱心にお祈りするようです（これは日本も同じ）。日の出前からいたるところのモスクからスピーカでアザーンの祈り声が聞こえてくると、慣れない人は跳び起きてしまいます。
運転手はいかにもジャワ人の丸顔でギョロ目・タラコくちびるなので見た目は恐ろしそうですが実はしゃべり好き・サボリ好き・ヒル寝好き・恐妻家で、お祈りしてるところを見たことがないなあ。ラマダン（断食月）の昼間から水を飲んでいるので聞くと「今日は体調が悪い。病気の時は飲んでもいい」だそうです。だったら医者に行けよな。
でもあまり熱心な人もねえ・・・昔リビアで仕事をしていた頃の運転手はエジプトからの出稼ぎでバリバリのモスリムでした。事務所から現場までの２００ｋｍの高速道路で祈りの時間になろうものなら「ミスター、車を止めていいか？祈りの時間です」ダメとは言えない。路肩にとめて車の脇に小さな絨毯を広げ、熱心にお祈りを始めました。終わるまで僕はボケーっとただ待つだけ。終わると彼は絨毯をクルクルと巻いて席の足元において何事もなく出発しました。

ゴムの時間
インドネシアでは予定時間なんてゴムのように伸びたり縮んだりしょっちゅう変わります。ドタキャンどころか完全にパスされてしまうこともあります。みんなで食事を約束していて、そのうち半分がキャンセルしてきた。後の人間は来るものと思っていると現れない。「○○とかが行けないんだから食事会はとりやめになるものと思ってた」なんて言い訳します。
毎週１回、ジャカルタから１時間半くらいの郊外の客先へ定例会議に行ってました。出席者は客から２名、こちらは３名、設計事務所から２名のつごう７人です。定刻より早く始ることはゼッタイにないので時間ピッタリに客の会議室に行くと誰もいない。事務所で聞くとまだ出社していない。設計事務所のヤツも姿を見せないし電話もない。「ああ、またか．．．」秘書嬢にいれてもらったコーヒーをすすりながら１０分、２０分、３０分。そこへ秘書嬢が「もうすぐ到着すると連絡がありました」え～まだかよ？さらに１５分たってようやく開始できました。誰かがこない事などよくあるし、途中で消えることも。戻ってこないから、結局中途半端なまま終わるんです。この客先というのも雇われ西洋人で、なぜか時間にルーズなのはインドネシア人なみ。長くいると感染してしまうらしい。

ちょっとそこまで
知り合いに道でであって「どちらまで？」「ちょっとそこまで」なんて意味のない挨拶をしますよね。インドネシアでもそうです。
ビルのエレベータでたまたま乗り合わせたインドネシア人どうしが
「クマナ？どこへ」
「ジャラン・ジャランちょっと行ってくるね」
ジャランジャランは散歩と日本の本に載っているけれど、これはまったく意味のない挨拶です。西洋人がこんな言い方してるの聞いたことないなあ。インドネシア人の精神構造は日本人と似ているんだろうか？

３イン１
３イン１とはジャカルタ中心部だけの交通規制のことで世界のどこにもない独自のもので、よくこんなことを思い付くもんだと感心します。これはあまりに渋滞がひどいので朝のラッシュ時に市内中心部に入る自家用車は１台に３人以上乗っていないと罰金となる規制です。
このため日本人どうしで相乗りをすることになるのですが、どうしても３人集まらないことのほうが多いハズです。そこで賢い１人のガキンチョが思い付いたのです。足りない３人目になって小遣い稼ぎをしようと。当然２人目になることもありです。規制区域に入ってしまえばガキンチョは車から降りてテクテク歩いて戻るのです。それにしてもよくこんな商売を思い付くもので、規制があればその裏をかく、何とアジアらしいことか。

両替を
手持ちのドルや円を現地通貨ルピアに交換するとき、ホテルでするのがラクチンですがレートが悪いので銀行がおすすめです。たいてい事務所の秘書嬢に頼むと１時間くらいかかって帰ってきます。すこし遠い銀行にして息抜きをしてくるのでしょう、ソッとしておいています。たまにこちらも気晴らしにビルの１階の銀行に両替にいきました。２つ銀行があり、１つは大和銀行、もう１つは現地資本の銀行があり、よせばいいのに大和銀行に行くことにしました。いままで邦銀に行って気分よく出てきたことは一度もないのに、それを忘れてまた入ってしまいました。窓口係の現地人のニーチャンが少し待てと言うのでソファに座ったけれどなしのツブテ。１５分もたったのでもう一度ニーチャンに聞くとまだかかると。そのうち銀行のシャッターが降りてしまい、客は２、３人だけになったけれど、まだまだ。相当たってからようやくニーチャンが僕を呼んだので、なぜこんなに遅いのか聞くと、上司がいないので決済できなかったとイイワケしだした。わかったわかった、お前は悪くないからトットと僕の両替をしてくれ～～。ようやく終わって、事務室奥のドアの方向を示して、あっちから出ろ。バカヤロもう２度と来るか、と叫びたいのをこらえて帰りました。
なぜ邦銀でイヤな目に会うかと考えてみました。窓口は必ず現地雇用の人（男女どちらも）なのですが、日本人上司の教育がヘタで日本人の悪い面だけを覚えて横柄になっているんじゃないだろうか？ＢＮＩとかのローカル銀行では日本国内と同じように感じたけどなあ。

クリスマスパーティ
プロジェクトの関係者（客・当方・設計事務所・建設会社）でクリスマスパーティを開くことになり、宴会部長Ｋ氏がとりしきってくれました。Ｋ氏は今回が初めての海外工事駐在で英語も不得手でもちろんインドネシア語など聞いたこともなかったのですが、みるみる溶け込んでカタコトの英語・インドネシア語のチャンポンでバリバリ仕事ができるんです。そのＫ氏が段取りした会場はコタのバタビアホテルの１階で、和洋いろんな食事を並べたりビンゴゲームの賞品を買ってきたうえ、バニー嬢まで準備してました。いったいどこで手配したのやら、聞いてもニヤッとするだけです。多分クラブのママさんかマネージャに頼んだのではないかな？飲んで食べてカラオケをして、最後になって客のプロジェクトマネージャが関係者全員に帽子をプレゼントし始めました。帽子の前には客のロゴマークとプロジェクト名、横にはそれぞれの名前を刺繍で入れてあります。安いけれども気が利いた品物で、記念にまだ持っているくらいです。
プロジェクトマネージャなど客の大半は西洋人の雇われで、オランダ・スイス・オーストラリアなどさまざまです。私の知っている３人のうち２人は男で家族を残し単身赴任なのですがこのパーティには女性を連れています。母国から遊びにきた奥さんなのですが実はどちらの客も現地妻がいます。こういう席では奥さん孝行のふりをしていますが、奥さんのいない普段は違うぞ、バラしてやろうかと皆で冗談を言いました。現地妻を持つのは西洋人に限らず単身赴任の日本人駐在員にもいます。もちろん、正式に結婚したカップルも大勢おり見掛けで判断することは危険です。

ベントー
しょっちゅう設計事務所に行っては資料の受渡をしたり打合わせをしたり、事務所の連中とはいい関係で、所長のＲ氏・プロジェクトマネージャのＨ君・秘書Ｔ嬢とは特に仲がよかったのです。ある日の打合わせが紛糾し長びいたあげく昼食で水いりとなりました。Ｒ氏は「食事をいっしょに食べよう。ただしみんなと同じベントーだけどそれでもいいか？」もちろんタダメシなら何でもＯＫです。出てきたのは透明パックに入ったナシゴレン（焼き飯）と鶏モモ肉の焼いたのでした。う～ん４０００＋３０００＝７０００ＲＰかな？きっと鶏は気をつかってくれたんだな。ちらかった会議室で秘書さんもいれてみんなで食事。
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