家内の実家は戦後すぐから菓子屋をしており、昨年までバーチャンは店に座って
招き猫ならぬ招きバーチャンをしていました。 創業75年かあ。
それくらいでは老舗とは言えません。せめて幕末創業くらいでないとネ。
今になって仕入先の問屋さんが閉店するのだとか、困ったなあ・・・
問屋さんはまだ60代なので安心していたのに、いろいろ理由があって
赤字になる前に店を畳むんだと。 想像するに後継者問題では?
実は、この20年で菓子問屋が変るのがこれで3回目。
菓子を作る店がやめるのは数え切れずです。
コロナでもウチの店の売り上げは変らず。問屋さんが感心するほど。
理由はハッキリしています。 昔のままの店構えで昔のままの菓子を
昔のままの売り方をしているから。(昔のままの菓子が入手しづらくなっています)
店のリフォームをした時、工務店に「以前とおなじように見えるように」
お願いしたことあります。「変えない」これも商売のコツかと。
亀田とか越後とか大手メーカーはスーパー・コンビニに卸しますが
当然、自前の販売網があったり、卸売業者を介します。
手前のような微小商店はスーパーやコンビニと同じ商品を扱っていては
太刀打ちできません。相手にもしてくれませんが。
なので、微小商店は微小メーカー・微小卸店に頼ることになります。
年寄りが作って年寄りが売る。 これが現状です。
あなたの近所に菓子の小売店がありますか?製造している店を知っていますか?
全国どこのスーパーやコンビニでも同じ菓子が並ぶ
そういう時代なのです、残念ながら。
買う側の問題ではなく、売る側・作る側に理由があるのです。
年寄りのメーカーには年期の入った機械しかなく、修理もままなりません。
本人だけでなく連れ合いが病気になるだけで、作ることができなくなるのです。
微小製造メーカーが店をたたむ理由は
体調が悪くなった
連れ合いが入院・入所した
機械が壊れた
材料が手に入らない
材料値上げでついていけない
どれも、若い頃なら乗り越える体力・気力があったのですが。
インターネットで探す?
年寄りはインターネットなどしていません。 なので代替のメーカーを
探すのは至難です。 同じ味・同じ値段など望むべくもありません。
応援のため大量注文しても、年寄りではどうにもなりません。かえって迷惑なのです。
売れないので閉店というわけではないからです。
さらに追い討ちの事態もあります。
製造しているけれど納入先を大手に絞った
会社ごと他社に吸収された
親戚が奈良の山奥で饅頭屋をしていたのですが、機械が故障することが増え
新しい機械はン百万円もするので、結局廃業しました。
とってもおいしい草餅だったのですが。
大阪中崎町の煎餅屋さん、爺さんが焼いて婆さんが売る小さな店。
どちらが欠けてもやっていけません。商売ではなく、焼いて売るのが生きがいなのです。
翻ってウチの店も同様で、赤字でなければいいか、そんなエーカゲンな商売です。
コロナだろうがインフルエンザだろうが、どうしても誰かとしゃべりたい
一日誰ともしゃべらない日が続くのはタマラない、そんな寂しい老人ばかりか
寂しいオッチャン・オバチャンまで来る始末。
「こんな店があったんだぁ」そういう元お嬢さん、75年前からここで商売してまっせ♪
閉店する問屋さん、しかたないのでしょうね。
いずれ手前の店もそうなるのですから。
製造する店は長く続くこともありますが、小売店は消える運命なのです。
大阪で菓子屋の老舗といえばこんなのが
本家小嶋
鶴屋八幡
高岡福信
もっともっと古い店もありますが
食べたことあるのはこれくらいなのです。
2022/7/30 追記
①駄菓子屋と菓子屋の違い
店を訪れる客の中には「なつかしい~ 駄菓子屋さんや」と言う人も。
チャイまっせ 元お嬢さん♪
とは言いません。 え~かげん説明するのもメンドーなんです。
アンタが好きそうな奴なら松屋町まっちゃまちに行きなはれ
そんなこともイチイチ説明しませんってば。
もちろん、ここで説明することもないです。
70年以上やってきたバーチャンなら腹立てながらも説明したかも。
生活が変り、食事や菓子の好みも変り、古臭い知識をひけらかすと商売の邪魔♪
駄菓子屋もなくなった今、ウチの店で駄菓子を売れば、きっと売り上げ倍増!
ですが
店を閉めるときまで、これまでと同じように売り続ける。そう決めています。
さてそれが何年先なのか、明日なのか・・・
②割れポン・割れ八橋
ポン煎餅を知る爺婆なら割れポンと言えば、あああれか、とわかってくれます。
醤油が付きすぎたり、曲がって焼けてしまったり、要するに正規品でないヤツ。
そればかりを袋詰めしてお安く仕入れています。
割れ八橋は京都京極通りの店でよく買いました。市販流通ルートには乗っていないようです。
誇り高い製造元はできそこないを売ることはせず処分しますが
もったいない(ケチ臭い)業者はそういうものでも安くして売るのは当然です。
ごく最近、つきあいのある製造元がそんな品物の見本をもってきました。
菓子の製造途中で出る切断クズを成型したもので、当然味はまったく同じ。
ケーキやバウムクーヘンで見るのと同じ理屈ですね。
ビックリの仕入価格(メチャクチャ安い)なので、かえって小売価格をどうするか 悩み中です。
安すぎまっせ若旦那?
③野良猫にエサ
ある日、ダンボール置場の戸をあけると中から黒猫が飛び出してどこかへ。
奥に隠れているうちに閉じ込めてしまったようです。
それ以来ときどき姿をチラッと見るようになり、さらに店内に入っていた痕跡が。
いくら可愛い猫であっても店に野良猫が出入りするのは許せません。
とはいえ、どうすれば来なくできるのか? そうだ、餌をやろう。店の外に。
ただし、鳩や雀や鼠と奪い合いになるともっと困ります。
餌をやるのは夕方、まだ陽のあるうち
店で売れないクズだけ
建物のそばから次第に離そう
定期的で飼い猫になっても困る
全身真っ黒というのは確認しましたが、5mより近いと飛んで逃げます。
さて餌をもらえない日はどうしているのやら。
ちなみに、バーチャンが代々飼ってた猫はどんな模様であれ、全て「クロ」
④近所に駄菓子屋
TVで近所に老舗の駄菓子屋があると写ってました。
???
近所にはウチより古い店も駄菓子屋もないんだが?
インタビューされた店主が「創業50年」と♪ 確かにそうです。
店の奥が喫茶店で店先でイカ焼やドラ焼・ソフトクリームを売っていたのが
菓子も売るようになり、コロナの頃から駄菓子を売るようになりました。
70年この町に住む家内も数度しか喫茶店に入ったことはないそうです。
僕は、冬はアンコなしのドラ焼を買ったり夏はクリームソーダを飲んだり。
ゴチャゴチャした商店街の横道、子供を連れて入ったことはないのです。
まして、子供だけで行くような場所ではない、と今も思っています。
⑤若いお嬢さん来店
ある日、女子高生か女子大生のようなお嬢さんがオズオズと来店。
昭和の香りばかりの店には似つかわしくない。
知らない菓子もあるけれど知っているものも結構あるとか。
聞くと地方からやってきたので、食べたことあるそう。
量り売りの店など絶滅危惧種
よく店の前を通るけれどなかなか入ることができなかったと。
2023/7/22 追記
とうとうウチの店も閉店することにしました。
利益どころか毎月赤字で、店に来るジーサン・バーサンの介護所みたいなもの。
店を開けば開くほど赤字になってまですることか悩んだ時期もあったけど
義母が結婚以来やってきた店、近所の知り合いも数少なくなっても
義母が亡くなるまではやっていこうと。
どのように閉めるのかその方法・手順を考えているところです。
①ある日突然に閉店
②閉店予告
③なじみ客にだけ予告
客が代わりの店を見つける時間がいるので③しかないなあ。
とはいえ、代わりの店など近所にないのです。似た菓子をスーパーで
売っているのかしらん?松屋町には駄菓子は売っているけど・・・
昔ながらの煎餅屋(製造販売)は2軒だけ知っています。
中崎町の長岡製菓所
松虫の はやし製菓本舗
いずれなくなるので、今のうちに食べてみてください。
2023/10/14 追記
前回追記のすぐ後に義母は亡くなりました。
その1ヶ月後に閉店。
閉店挨拶は2ヶ月間は掲示。
たまにしか来店しない客のため。
建物も完全処分の予定です。