レンズ 参の沼
 Jupiter-11  望遠単焦点 135mm F4 Airforce

ロシア オールドレンズが安くて比較的写りがよいと写真雑誌にしばしば出てきます。
最も有名なのは Hellios-44 と Jupiter-9 です。
ロシア(旧ソ連邦)は独特の生産体制で、同じ型番レンズを複数の工場で製造しており
その工場ロゴがついているのを見ることができます。ただし工場名称は刻印されていません。
JupiterシリーズはJupiter-3 から Jupiter-100 まで14種類あります。
Jupiter-350mm F1.5
Jupiter-6180mm F2.8
Jupiter-850mm F2
Jupiter-985mm F2
Jupiter-11135mm F4
Jupiter-1235mm F2.8
Jupiter-13125mm F1.5
Jupiter-1752mm F2
Jupiter-21200mm F4
Jupiter-36250mm F3.5
Jupiter-37135mm F3.5
Jupiter-3875mm F4
Jupiter-39135mm F5.6
Jupiter-100100mm F2.5
そもそも望遠レンズを使う機会はこれまでなかったので、なぜJupiter-11を買うことになったか?
それが「 Airforce 」の一言なのです。
このレンズはロシア空軍が使うシネカメラAKS-1で使うようになっています。
レンズマウントは独特で他(KievやContaxなど)と互換性はありません。
空撮なので無限遠固定(焦点を変えられない)絞りはF4-22まで無段階。
ニコンFマウント用に改造してはありますが、無限遠固定はあいかわらずです。

第二次大戦(ロシアでは大祖国戦争と呼ぶ)でドイツに勝ち、CarlZessの工場設備や
材料どころか設計書・技術者などをロシアに持ち帰って生産したレンズの中に
   CarlZeiss Sonner 135mm F4
があり、ドイツ製原料ガラスが無くなる前にロシアガラスで撮影できるように設計変更したのが
   Jupiter-11 135mm F4
です。贅沢なガラスの使い方などそっくりです。
Airforceとはどういう意味か?
日本でもドイツでもレンズは大量生産して市販するのが前提です。(売れないのは仕方ない)
そのため生産設備そのものの検査から製品の中間段階での検査、仕上がった製品の検査で
均一な品質を確保するわけですが
ロシアでは、仕上がった製品検査で特に良いものを別枠にして、政治家用・軍用としたそうです。
なので、高精度のものが空軍用にまわされ、操作系もそれなりに変更されたわけです。
ソビエトが崩壊してロシアやウクライナなどに分裂して、あとはお察しの通り。
市販して売れるものだけが生産ラインに残され、それ以外は
  @レンズ工場が在庫を投売り
  A空軍あるいは基地が放出
  B軍関係者が横流し
  C泥棒が裏販売
eBayでAKS-1マウント品5個を売っているのを見たことがあります。
この個体はどのような流通経路をたどってきたのでしょうか。

ニーズがごく限られる超マニアックなレンズなので
値段も一般レンズと同じか、かえって安く、ついポチッと
オリジナルのAKS-1マウントなら随分安いのですが、Nikonマウント改造品を。